調剤薬局勤務おじさん薬剤師の仕事内容

調剤薬局勤務のおじさん薬剤師です。薬のことを調べてもすぐに忘れてしまうので、自分でしらべた薬に関するメモ書きとして記録しております。

軟膏を塗る順番で皮膚からの吸収率は変わらない2つの理由

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軟膏を塗る順番で皮膚からの吸収率は変わらない2つの理由

 

皮膚の乾燥・かゆみに対してステロイド軟膏とヒルドイドローションが同時に処方されることがあります。皮膚からの吸収速度については、どちらを先にぬっても効果は一緒です。

 

ただし、ステロイド軟膏を先に塗った後にヒルドイドローションなどの保湿剤を広い範囲に塗り広げると、先に塗ったステロイド軟膏が必要のない部分まで広がってしまうことがあり、気にする方もおります。そのため一般的には「広い範囲の塗り薬を先に塗ってから、狭い範囲の薬を次に使用する」という回答を主流となっています。

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複数の塗り薬を使用する場合、「どちらから先に塗ればいいですか?」という質問を受けた場合、明確な理由をお伝えした上で「どちらから塗っても効果は同じです。広い範囲の薬から塗ってから、狭い範囲の薬を塗りましょう」とお伝えできれば患者様も効果が変わらないことをご理解した上で安心して使用していただけるのではないかなぁと感じましたので、今回は軟膏を塗る順番で皮膚からの吸収率が変わらない2つの理由を調べてみました。

 

1:ステロイドなどの軟膏とヒルドイドソフト軟膏・クリーム・ローションとの併用について

 

A:ステロイド軟膏を塗ったにヒルドイドソフト軟膏を塗る

B:ステロイド軟膏を塗った後にヒルドイドクリームを塗る

C:ステロイド軟膏を塗った後にヒルドイドローションを塗る

D:ヒルドイドソフト軟膏を塗った後にステロイド軟膏を塗る

E:ヒルドイドクリームを塗った後にステロイド軟膏を塗る

F:ヒルドイドローションを塗った後にステロイド軟膏を塗る

G:ステロイド軟膏とヒルドイドソフト軟膏を混合したものを塗る

プロトピック軟膏と各種ヒルドイド製剤をどの順番で併用しても効果は一緒

A~Gまでの塗り方は、いずれもステロイド軟膏の効果は一緒であることがヒルドイドを販売している“マルホ株式会社”のホームページに記されています。またステロイド軟膏の変わりに“プロトピック軟膏”でも同様に各種ヒルドイド製剤と併用する場合、塗る順番は問わないというデータがでています。

ステロイド軟膏とヒルドイド製剤はどの順番で塗っても効果は一緒であることは製薬会社のホームページや臨床報告によって多くの裏付けがなされています。今回はその理由と患者様への説明内容についてを以下に記します。

2:皮膚に塗った塗り薬の吸収速度について

皮膚に塗った薬が染みこんでいくルートには主に3ルート(毛包汗腺ルート、細胞間ルート、角質細胞ルート)あるのですが、最速浸透ルートである毛包汗腺ルートには軟膏を塗って1時間後には吸収が確認されており、2時間後には角質層などの表皮を通過して真皮まで軟膏は到達しています。軟膏を塗布して3時間後には血液中まで到達して、腎臓を経由して尿中から排泄されることも確認されています。これらのことから、皮膚に塗った軟膏は“1~2時間程度で皮膚の奥の方まで染み込んでいきます”と患者様へお伝えすることができます。

 

次に、複数の軟膏を塗る際に、順番を問わない得力のある理由を考えてみました。

3:ステロイド軟膏とヒルドイドソフト軟膏の組成について

 

リンデロンV軟膏0.12%(ステロイド軟膏)という薬には1g中に1.2mgのステロイド成分と998.8mgの白色ワセリンや流動パラフィン(ベビーオイル)などの基剤が含まれています。イメージとしては1Lのサラサラとした油に1ml(1/1000量)の薬成分を混ぜたような薬です。

 

ヒルドイドソフト軟膏0.3%には1g中に3mgの保湿成分と997mgのグリセリンや軽質流動パラフィン、白色ワセリンなどの基剤が含まれています。イメージとしては1Lのサラサラとした油に3ml(3/1000量)の薬成分を混ぜたような薬です。

 

上記2剤はどちらも99%以上がサラサラとした油で構成されていることがわかります。そのため、例えばヒルドイドソフト軟膏を先に皮膚に塗って、そのあとにリンデロンV軟膏を塗った場合、後に塗ったリンデロンV軟膏のステロイド成分は、(厳密にはリンデロンV層とヒルドイドソフト軟膏層という2層を通過して皮膚まで到達するわけですが、)、ほとんど同じような2層の油成分を通過して、容易に皮膚まで到達することが可能となります。

 

このため2つの軟膏(3つ以上の軟膏を塗る場合も同様に)を塗り重ねても効き目に差が出ないことがわかります。

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まとめ

ステロイド軟膏とヒルドイドソフト軟膏などの保湿剤はどちらを先に塗っても効き目はかわりありません。その理由は、処方される塗り薬はその種類を問わず、ワセリンなどの“基剤”と呼ばれる油で90%以上が構成されており、実際の効きめ成分は数%しか含まれておりません。そのため2剤を重ね塗りした場合であっても、後から塗った薬も容易に2層を通過して皮膚まで到達できます。その後、皮膚は1~2時間という早さで真皮まで軟膏を吸収することができるので、塗り薬は重ね塗りしても2剤ともに十分な効果が発揮されると解釈することができます。